署名し終わった示談書とペン

風俗で本番行為をしてしまい、店や女性から多額の慰謝料や損害賠償金を要求されている…こんなトラブルが後を絶ちません。風俗店側からの請求を退けてトラブルを切り抜けるには、示談が有効な手段です。示談について見ていきましょう。

風俗トラブルで示談するメリット

風俗トラブルで示談をするメリットはどこにあるのでしょうか。

請求額を引き下げられる

本番をしたことで風俗店や女性から50万円や100万円などの高額のお金を要求されるケースが多いのですが、これらは払わなければならないお金ではありません。

しかしだからと言って請求を無視し続けると、勤務先や自宅に風俗店の関係者が押しかけてくる可能性もあります。示談交渉をすることで請求額について妥当な金額になるよう交渉することができます。特に弁護士が入って交渉すれば、示談金は相場以内に収まることがほとんどです。

根本的な解決が見込める

示談の際には清算条項や秘密保持条項などを盛り込むのが一般的です。これらの条項を入れることで、風俗での本番トラブルを根本的に解決することができます。

風俗トラブルで厄介なのが、相手が個人情報を持っていることです。携帯番号だけではなく本名や自宅住所を知られていることで執拗な請求が止まずに不安な日々を過ごしている人は多いのではないでしょうか。示談交渉をして示談書にこれらの条項を入れ込むことで、今回の本番トラブルを終局的に解決することができます。

風俗での示談の相手は誰になるの?

風俗嬢と本番をして店に呼びだされた場合、示談の相手方は店だと思っていませんか?実はそれでは不十分です。

風俗店に対する慰謝料や損害賠償の支払い義務はほとんどありません。なぜなら、本番行為で実際に怪我をしたり精神的なショックを受けたりするのは女の子です。女の子との示談をせず店とだけ示談を交わしても、後からそれを理由に風俗嬢から損害賠償や慰謝料を請求される可能性があります。

風俗店によっては、わざと女の子を示談交渉から外しておくという手段を取ることも。示談はお店ではなく女の子と行うということを押さえておいてください。

ただし、現実問題としては、女性と直接示談を交わすというケースは稀で、ほとんどがお客と風俗店との間で交わされます。後述しますが、この場合、有効な示談が成立するためには女性の委任状が必須となるからです。

風俗で示談する時の支払相場

示談金として要求される金額はケースによっても異なりますが、風俗店によっては数百万円という高額な示談金を要求するというケースもありました。相場を知っておくことは大切です。

示談金の相場は、本番行為をするにあたり女性の同意があったかなかったかによって金額が違ってきます。

同意があった場合には基本的にはお金を払う必要がない、つまりは示談をする必要がありません。これは当然のことでしょう。ただし、同意があったとしても避妊具が途中で破けてしまったり、女性の身体に傷をつけてしまった場合には、妊娠や性病の検査費用や治療費の負担程度の示談金は発生します。

しかしこれも、避妊具が破けたり女性に傷をつけてしまったことにつきお客に落ち度がない場合は支払不要ですし、落ち度があった場合でもその過失割合によって支払い金額は変わります。こういった検査や治療費用はかかったとしても10万円以内で収まることがほとんどなので、同意がある本番行為での示談金相場はおおよそ5~10万円の範囲内と考えておけばよいでしょう。

では、女性の明確な同意がなかったり(例えば、本番をしていいか聞いたがまったく返事をしなかったようなケース)、強い拒否反応はないものの本番行為を拒否する発言(例えば「ダメです」などと口にするが挿入してもまったく拒否しなかったようなケース)があった場合の示談金相場は幾らでしょうか。

この場合は、積極的な女性の同意がない以上、検査や治療費の全額負担にプラスして慰謝料も発生します。慰謝料は具体的には10万円前後と考えてください。とすると、先ほどの5~10万円に10万円を足した金額、15~20万円程度が示談金相場となります。意外に少ないと思われた方もいるとは思いますが、積極的には本番に同意していないものの、拒否の程度が低いため違法性が少ないと判断されるのがその理由です。

それに対して、女性が明確に拒絶しているのに、押さえつける・殴るなどの暴力を振るったり、騒ぐと殺すぞといった脅し文句を吐いたりして行為に至ったのであれば強姦罪が成立しますので、この場合は治療費等の他、100万円~の慰謝料や損害賠償を支払う必要が出てくる場合もあります。

しかし、本番行為の合意が実際にあったかどうかはケースバイケースでの判断となりますが、このトラブルで最も多いケースが「女性から本番しようと言われた」「男性から本番したいと言ったが拒否されなかったので承諾があったと思った」というケースがほとんどです。相手を押さえつける・暴力を振るって無理やり本番行為をするなどの特殊なケースはほぼありません。

風俗で示談書を交わす時に注意しておきたい7つのこと

悪質な風俗店や女性に対しては、示談交渉の際に一方的に不利益な内容で書面を交わされることのないよう注意が必要です。後で後悔しないための示談の際の注意点をまとめましたので参考にしてください。

原則示談の蒸し返しや撤回はできない

まず押さえておきたいのは、示談が成立すると撤回や再交渉はできないということです。厳密には異なりますが、民法上の和解(695条)と同意義と考えてよいでしょう。

和解は契約で、「当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約する」ものです。和解契約を結ぶことで争っていた法律関係は確定することになります。

和解はお互いに譲歩して解決策を探った結果結ぶ契約なので、その内容で合意していることが大前提です。そのため、基本的に蒸し返したり後から撤回することができません。

「風俗嬢と話し合って示談金を払うことで話がまとまったが、よく考えたら示談金が高い気がする。なんとかならないだろうか」このような相談をお受けすることもありますが、適法に話し合った末の結論であれば再交渉は困難です。後から後悔しないためにも、しっかりと自分の要求を把握して伝える・相手に飲まれないことが大切です。

示談書の控えは受け取る

通常、示談書は2部作成します。それぞれに両当事者が署名をして1通ずつ保管するのですが、風俗店によっては示談書の控えを渡さないケースがあります。

これは、示談書の内容が一方的に相手にとって有利になっている場合など、後から示談書の内容について男性が確認して「おかしい」と思う箇所を見つけられないようにという意図があります。当たり前のことですが、示談書に署名をした際には示談書の控えを必ずもらってください。

店側で作成した示談書は内容をしっかり確認

風俗店が示談書を作成したものにただ署名だけを求められるケースもあります。規約に違反して本番行為を行ってしまったという後ろめたさやスタッフから強い口調で責められて恐怖心を抱いていることが相まって、言うとおりに示談書に署名してしまうこともあるでしょう。

しかし、先ほども書いたとおり相手側が作成した示談書には利用者側にとって利益となる条項が入っていないことが多いものです。また、事例ごとに示談書を作るのではなくあらかじめ用意されている画一的な示談書を持ち出してくる場合もあります。

このような場合は、署名する前に慎重に示談書の文面を確認しておきましょう。
その場で判断がつかない場合は、一旦持ち帰って署名すると伝え、できるだけその場で署名することは避けましょう。

風俗嬢の委任状がなかったら絶対に示談書面を交わしてはいけない

女性と直接示談交渉ができる場合もありますが、多くのケースでは利用者男性と風俗店との間での交渉となります。そのため示談書に署名するのはお客と店の責任者というのが一般的です。

しかしそうすると女性はこの示談に関わっていないことになり、女性とは改めて示談交渉をする必要が出てきます。特に女性が本番を強要されたと主張して、強姦罪で刑事告訴する意思を持っているなど関係が悪化している場合は要注意です。

もしも行為が強姦罪にあたってしまうような場合には、示談で解決する際に女性から刑事告訴をしないという確約をもらう必要があります。

このようなケースでは、実際に本番行為を行った女性からも実名で署名をもらっておかなければ、刑事告訴されるリスクは依然として残ることになります。もしも女性が表に出てこず交渉の相手が風俗店ならば、女性からの委任状があることを確認してから交渉にあたってください。

示談金を払ったら領収書・受領証を受け取る

本番をすることは規約違反でもあります。お客に落ち度もあるため示談金を請求されるケースは多いものです。示談金が5万円〜10万円という相場の範囲内だったら、示談金の支払いに合意しても問題ありません。

示談金を支払ったときには必ず受領書・領収書を発行してもらってください。そうでなければ、示談金を払ったという証明ができません。証明できないことを悪用されて再度示談金を要求してくるケースもあります。

会話は録音しておく

示談交渉で話がまとまったら示談書を作成するのですが、先方が示談書を作成したような場合には示談書に書かれている内容が話と違うというケースもあります。そうなると示談書に署名する前に再度交渉しなければなりませんが、「そんなことは約束してない」「言った覚えはない」などとシラを切られることもあります。
改めて交渉し直すというのでは時間もかかりますし労力も大変です。交渉するときには会話を録音しておきましょう。

違約金を定めておく

示談書をかわしても、示談を破られることもあります。悪質なデリヘルであればその可能性は頭に置いておくべきです。
もしも示談の内容を相手が守ってくれないとき、ペナルティを定めておかなければどうすることもできません。「前記誓約に違反した場合は金◯◯の違約金を支払う」などの一文を入れ、違約金の定めをしておきましょう。

風俗店や女性と交わした示談書の効力が争える場合

先ほど、示談交渉して示談書に署名をしたらその後示談書の効力については争えないと書きました。本人たちが納得して自由意志で示談したと考えられるからです。しかし、署名した後でも示談書の効力について争うことができる場合があります。具体的に見ていきましょう。

風俗店や女性から脅迫された

「この書類にサインしないと家族にこのことを言いますよ」「強姦罪で警察に行ってもいいんですよ」などと風俗店や女性から言われ、なんとかその場を切り抜けたいという一心で言われるままに署名してしまったような場合には、自由意志があったとは認められません。このようなケースは民法上の強迫にあたるため、示談の意思を取り消すことができます(民法96条)。

民法第96条
第1項:詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

「彼氏」などの第三者から強迫された

強迫を理由に示談の意思を取り消すことができるのは、強迫してきたのが当事者である風俗店や女性である必要はありません。第三者からの強迫でも示談の効力を取り消すことができます。

風俗における本番トラブルにおいて、女性の彼氏と名乗る男性が現れることがあります。「自分の恋人が、この本番行為が原因で病院に通っている。彼女は慰謝料を請求しているが、払わないなら職場にばらすぞ」などいろいろなことを言っては示談金を要求してくるケースも多いのです。この場合、男性の脅しに耐えかねて

内容が公序良俗に違反している

風俗嬢から本番を誘ったなど、女性と利用者の男性との間に合意があったにもかかわらず示談金として100万円を設定しているなど、あまりにも行為に対して支払う示談金の額が高すぎるような場合には、公序良俗違反としてそもそも示談は成立しません。

民法90条
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする

本番行為自体を争っているが示談書の書き方がわからない

男性側は本番を強要したわけではなく、合意のもとで行ったと認識している場合でも、示談書には「私は本番行為を強要しました」というような一文が載っていることがあります。これは、風俗店が元から作成している示談書を使う時に多いケースです。

もしも、本番行為を強要したかどうかについて争っているのにこの示談書に署名してしまうと、本番行為を強要したことを認めたことになってしまいます。

本番行為を強要していないと主張しているがトラブルを長引かせたくないので示談で解決するという場合にも示談をすることはもちろん可能です。
この場合、本番行為を強要したかどうかについては示談書に明記する必要はありません。「事実関係については議論しない」のような一文を入れるようにします。

示談後は公正証書にして残しておくと安心

示談交渉が終わり、自分の権利保護条項を盛り込んだ示談書を交わせれば、本番トラブルは解決したも同然と言えます。しかし中には示談したのにそれを破ってくる極めて悪質な風俗店や女性もいます。

通常はここまでする必要はありませんが、心配な場合は念には念をいれて示談書を公正証書にする方法もあります。公正証書とは、公証人が作成する公文書のことで、公正証書にしておくと以下のようなメリットがあります。

・公証役場に示談書が保管されるため、改ざんされたりあとから奪われたりする危険性がない
・相手が示談書に書かれたことを破ったとき、裁判によらずに強制執行できる
・法令に違反していないか公証人がチェックしてくれるため、内容について後から争うことがなくなる

一方で公正証書にはこんなデメリットもあります。
・作成の際には当事者の双方が公証役場に出席する必要があるため、風俗嬢やデリヘルに拒まれる可能性がある
・公証人はゼロから示談書を作成してくれるわけではない

公証人はあくまでも作成後の示談書が法令に違反していないかどうかをチェックしてくれるだけなので、弁護士に交渉に入ってもらいしっかりとした示談書面を作成してもらってから公正証書にする必要があります。

風俗での示談の相談解決事例

相談事例:警察に行かないかわりにと、示談金200万円を請求された

200万円の札束が入った財布

先日、自宅でデリヘルのサービスを利用しました。風俗で本番をするのは規約で禁止されていることは知っていましたが、女性から本番はどうかと持ちかけられることもあってそこまで厳しく考える必要はないと自分は考えていました。

サービスを受けている途中で意図的ではなかったのですが挿入してしまいました。慌てましたが、その時女性は何も言わなかったので、挿入してもいいものと思いそのまま性行為をしてしまいました。その時は成り行きで挿入してしまったので避妊はしていません。しかし女性から騒がれることもなく、気持ちよかったね、と言って普通に帰って行きました。

しかし後日風俗店から携帯に連絡が入りました。「女の子が無理矢理本番されて中で出されたって泣いてるんですけど。規約にも書いてありますよね?悪質な行為なので警察に行こうと考えています」という内容でした。確かに、女性に対して本番をしてもいいかという許可は取っていません。しかし拒否された事実もないため、「無理矢理やってない」と相手に伝えました。

風俗店の男性は、「いきなり本番をされて、怖くて何も言えなかったと本人は言っている。これは強姦だ。どうしてくれる」とさらにまくしたててきます。女性が無理矢理されたと言っている上に、こちらから本番をしていいのかの確認もしていない以上、自分の言い分が通ることはないと諦めた私は「警察だけはやめてください」と答えました。

自分には家族がいますし、穏やかな生活を送っています。強姦罪で警察に逮捕されてしまえばその後どうなるのか、考えただけでも血の気が引く思いでした。「警察に行かれたくない気持ちはこっちにもわかる。じゃあ示談しましょう。後日店に来てください」と男性に言われ、その日は電話を終えました。

後日男性に言われた住所に行ってみると、そこはデリヘルの事務所のようでした。中の応接室のようなところで男性と顔を合わせました。男性は、私の名前を確認すると何やら書類を出してきました。よくみるとそれは領収証がコピーされたものです。

「○○さんが女の子に対して本番強要をした後、証拠を残すために女性に検査に行ってもらってます。その時に陰部にケガをしていたので治療もしました。その領収書と、アフターピルの領収書です」と男性が説明してきます。

男性の話によれば、その後女性はデリヘルに出勤して来ていないとのことで、あの本番行為がショックだったに違いないとのことでした。店にも大きな損害が出ている。本当は女性の気持ちも考えると、自分を警察に突き出してしかるべき罰を受けさせたいところだが、家庭も仕事もあることを考慮してなんとか気持ちを抑えた。

この責任としてこちらは示談金200万円なら手を打てると考えている、と言われました。

さすがに示談金として200万円というお金は大きすぎるのではないかと感じ、返事ができずに黙っていましたが、「まだ時間が経っていないのでわからないが、もしかすると妊娠しているかもしれない。以前にも同じようなことがあった。妊娠していたとしたらこんなものでは済まない。だが、もし今回妊娠が発覚したとしても示談で解決する以上、200万円以上の損害が出ても請求はしない」と言われました。

この交渉を拒めば、警察に逮捕されるうえ、妊娠が発覚でもしようものなら大変なことになると怖くなった私は、「わかりました」といって示談に応じ、示談書にサインをしました。

その後帰宅していろいろ調べてみたのですが、妊娠中絶詐欺という悪質な手口を使うデリヘルもあることを知りました。正直、今回の示談にも納得がいっていません。交渉をやり直し、示談金を引き下げることはできないのでしょうか。

解決に至った経緯

今回のケースでは、本番に対して女性との合意はありませんでした。合意がない場合には損害賠償などの支払い義務が生じることがありますが、それでも相場としては数万円〜10万円程度のものです。しかし今回は示談金として風俗店から200万円を要求され、依頼者もそれに応じています。原則として一旦示談で合意してしまえば、同じ内容で改めて示談をやり直すことは困難です。

ただ、今回の場合は相手から「警察に行きたいが、示談に応じるなら行かない」「妊娠している可能性も否定できない」などと言われています。この言葉に影響され、「警察に行かれるくらいなら」と怖くなって示談に応じていますので、依頼者が自由意志を持って応じていません。

これは民法上の強迫行為にあたるため、意思表示を取り消すことができます(民法96条)。これを根拠に、示談書の効力取り消しと交渉のやり直しを先方に要求しました。

依頼者と相談した結果、自分にも非があることを認められ、風俗店から提示された医療費の領収書に関しては支払っても構わないとのことでしたので、これをもって示談金とすることを主張しました。

弁護士が間に入ったことによって示談交渉の場では依頼者の利益を主張し、希望に沿った形で示談をまとめることに成功しました。

示談交渉の場には当事者である女性は出席していませんでしたが、風俗店とだけ示談が成立してもそこに女性が関係していなければ今後女性からお金を請求されるなどのトラブルが続く可能性があります。

そこで、風俗店には当事者女性の委任状を用意してもらい、性行為を行なった当事者間で示談交渉を完結させることができました。後日、男性に対してデリヘルのお店や女性からの連絡や請求は一切ありません。