風俗の男性スタッフがお客が着ている洋服の胸倉を掴み睨みつけている

風俗業界イコールやくざが関係していて、お客との間でトラブルが起きるとコワモテの男が登場して目が飛び出るような金額を脅し取られる。そういったイメージを抱いている方も多いでしょうが、実際は違います。

最近では脱サラをしてデリヘルを開業する人や、フロント企業ではない普通の法人が風俗経営に乗り出してきている時代です。しかも今の時代、お客とのいざこざに暴力団を利用しただけで、暴力団対策法で処罰されますので、仮に店がその手の者と繋がっていたとしても、そう易々と警察に御用になるようなことはしてきません。

しかし現実問題として、本番行為や盗撮が店に知れると、ガラの悪い店員に怒鳴られたり、正座を強要されたり、謝罪文を無理やり書かされたり、挙句には罰金や示談金名目で多額のお金を要求されているといった相談が後を絶ちません。

また、それとは逆に、声のトーンを荒げることなく冷静淡々と、「警察に通報します」「逮捕されたら家族や職場にばれますよ」といった脅しの決まり文句を口にして心理的に追い詰める手口も少なくありません。

多くの方がイメージする暴力団による恫喝ではないにせよ、等しく怖い思いをすることに変わりはなく、風俗店側の言動の中身次第では、脅迫罪・恐喝罪といった犯罪に該当します。また、脅されて仕方なく書いてしまった念書や示談書なども民法の「強迫」という規定で取消すことが可能な場合もあるのです。

昔からこの業界では、風俗嬢に本番を誘わせておき、お客がそれに応じて本番行為をしたところで「無理やりされた」と手のひらを返して店に報告し金銭を脅し取る悪質な常套手段の手口を使う店も少なくありません。

また、ホテルや自宅、風俗店のサービスルーム内での自分の性行為の盗撮は法律上は罪にならないにも拘わらず、お客がそれを知らないのをいいことに犯罪だと捲し立てて怯えさせてお金を取りにかかるパターンも、今も昔も変わらず業界では横行しています。

そこで、風俗店や勤務女性の脅迫めいた言動がどのような法律に触れる可能性があるのかを理解し、そして実際に被害に巻き込まれた際にどのように対処すべきかを弁護士が解説していきます。

恐喝と脅迫や強迫、強要の違い

風俗で脅されたといっても、恐喝や脅迫などいろいろな言葉で表現されることがあります。それらは厳密には違う意味を持ちます。簡単に確認しておきましょう。

恐喝罪と脅迫罪の違い

恐喝と脅迫は、刑法上でそれぞれ犯罪の規定があります。恐喝罪は刑法249条に規定があり、「人を恐喝して財物を交付させた」とあります。脅してお金を請求するという風俗店の手口は恐喝罪に当たる可能性が高いものです。

一方、刑法222条の脅迫罪も手口は似ていますが、財物の交付が要件になっていません。「生命や名誉などに害を加える胸を告知」すれば脅迫罪となります。例えば話し合いの際に「家族がどうなってもいいのか」などと言われた場合は脅迫罪が成立します。

強要罪との違い

脅迫罪に続いて強要罪という犯罪がありますが、こちらは脅迫を用いて相手に義務のないことを行わせた時に成立する犯罪です。

例えば本番をしていないにもかかわらず、風俗側から「本番をした」と言いがかりをつけられて殴られて念書にサインをさせられたといったような場合は強要罪にあたります。この上さらに金銭を支払うよう要求されたら恐喝罪となります。何がどこまで行われたのかによって犯罪の内容が変わってきます。

脅迫と強迫の違いについて

少し細かくなりますが、同じ読みでも脅迫と強迫はまた意味合いが異なります。
脅迫は先ほど見たように刑法上の犯罪となり、相手を脅す行為です。「会社にこのことをばらすぞ」「おまえの人生をめちゃくちゃにしてやる」などといった脅しがこれにあたります。

一方強迫は民法上の言葉です。害悪を相手に伝え、その結果相手が恐怖心から意思表示をするとこの強迫にあたります。例えば「念書にサインしないと警察に行く」と言われて恐怖心から念書にサインをした場合、強迫による意思表示となりその念書は取り消すことができます(民法96条)

風俗で脅されたときの対処法

どんなに怖くてもお金を払わない

悪質な風俗店や女性は、利用者男性が本番をしたことを利用してお金をむしり取ろうとしてきます。しかし「金を払わなければ殺す」などと直接的なことを言ってしまうと恐喝罪で告訴されてしまうため、犯罪にならないスレスレのところを狙ってきます。

「誠意を見せろ」「どうしてくれるんだ」「わかってるだろうな」など抽象的な言葉で迫り、恐怖心から男性が「お金で解決してください」「お金を払うので今回は見逃してください」などと言ってくるのを待っているのです。もしも店や女性からこのように言われても、その場でお金を払わないことが大切です。

この後に説明しますが、現在進行形の請求については、弁護士が介入することで比較的容易に突っぱねることはできますが、一度支払ってしまったお金を取り返すのは時間と手間が掛かってしまいます。また、脅せばお金を出す人とラベルを貼られてしまうと、様々な理由付けで執拗に要求されるスパイラルに陥ることもありますので注意が必要です。

会話は録音、または詳細を記録しておく

風俗を利用したあとに携帯に連絡があり、「今から店に来い」と言われた場合や、日を改めて話し合いをする時には、話し合いの内容を録音しておきましょう。あとから弁護士に相談する時にも証拠があったほうが解決も早いためです。

この時相手に録音することは伝えなくても録音したデータは証拠として使えますが、場合によっては録音することを伝えることで相手を警戒させ、無茶な要求をさせない抑止効果も期待できます。

最近ではスマートフォンを利用されている方も多いと思いますが、iphoneやAndroid携帯ともに、ボイスレコーダーや電話の通話録音機能が標準で搭載されている機種が殆どでしょう。さらにAndroid携帯でしたら、電話がかかってきたら全ての通話内容を自動で録音してくれる自動着信通話レコーダーという便利なアプリもありますので、事前にインストールしておくと良いでしょう。

しかし、ラブホテルや自宅、サービスルームに男性スタッフが乗り込んできて、とてもではないが携帯を取り出して録音機能を作動させることができないような状況であれば、あとでその状況を詳しく日記などに書いておくことも有効です。万一裁判になった場合や、そうでなくとも、弁護士が交渉に入る際も、日記は恐喝や脅迫の証拠として有用に活用できるのです。

暴行されたら怪我の跡は撮影し、診断書を用意

もしも言葉だけでの脅迫に終わらず、実際に殴られたり土下座をさせられたりしてけがをした時は、怪我をした部分の写真を撮っておくことも大切です。できれば病院に行き、診断書を保管しておくとなおいいでしょう。暴行されたことの証拠にもなりますし、後で風俗店側と示談交渉をする時に傷害罪での刑事告訴を引き合いに出して交渉を有利に運ぶ材料になります。

恐喝されて払ったお金は取り戻せる?

当弁護士事務所に相談に来られる方の中には、長期間にわたっていろいろな理由をつけてお金を要求され、支払い続けている方もいらっしゃいました。総額するとかなりの金額です。本当は払わずに済んだはずのお金を取り戻すことはできるのでしょうか。

恐喝されて支払った場合、民法709条を根拠として不法行為による損害賠償請求の形で支払ったお金の返還を求めることになります。事を公にしたくない場合は裁判以外の方法で解決を模索することになりますが、裁判を通じて請求が認められれば強制執行も可能になります。

逆に「脅迫だ」と相手から言われたら?

悪質な風俗と言い争っている最中にこちらも強気になって相手を刺激する発言をした時、それを逆手に取って相手が「おまえを脅迫で警察に告訴するぞ」などと言ってくることがあります。その時はどんな対応をすればいいのでしょうか?

「訴えるぞ」は脅迫罪にあたるのか

風俗側からの脅しに対し「訴えますよ」などと言って追い返そうとしたとしても、実際にそのつもりであれば脅迫罪にはなりませんので安心してください。お客は脅してくる風俗関係者を訴える権利を持っていますが、「訴えますよ」という発言は権利を持っている側がその権利を実行することを相手に伝えたというだけのことだからです。

「訴えるぞ」などの発言を逆手に取られて風俗関係者から「それは脅迫だ」などと言われても相手にしないことが肝心です。

風俗での脅迫・恐喝の相談解決事例

相談事例①:本番強要で女性が怪我をしたと恐喝されました

指を突きつけて恫喝する風俗店の店員

先日、出張先のビジネスホテルでデリヘルを利用しました。その際に風俗嬢から「1万円上乗せすれば本番してもいいよ」と言われました。

この風俗店は何度か利用したことがあり、規約で本番行為が禁止になっていることはわかっています。しかし、中には本番行為を黙認してたり、今回のように自分から勧めてくる女性もいることを知っていたので、この話に乗って1万円を支払いました。

そのままサービスを受け、その日は何事もなく終わりました。女性が帰るときに「また指名して」と言われたので携帯電話の番号を交換して別れています。

後日女性から連絡があり、「本番行為の後に陰部から出血したので病院に行った。治療費を支払って欲しい」と連絡がありました。金額もそう高くなかったため、了承してお金を振り込みましたが、後日知らない番号から携帯に着信が入っているのに気がつき出てみると、出張の際に利用したデリヘルのスタッフと名乗る男性です。

「スタッフの女性から本番行為を行なったと聞いている。本番行為は規約違反だが知っててやったのか」と強い口調で聞かれました。女性が病院に行って治療してもらっていることもあって、しらばっくれてもダメだろうと観念し「本当です」と認めたところ、「とりあえず詳しく話しましょう。店の事務所の住所を教えるのでこちらに来てください」と言われました。

店に行くことは断りたかったのですが、なんと言ったらいいかわからず黙っていると「こっちは携帯番号から本名とか住所とかわかるんですよ。来なかったら自宅に行きますよ」と言われてしまったので、仕方がないと諦めて店に向かいました。

風俗店の事務所には男性が2人座っていて、囲まれるように座らされ「この間の本番行為のせいで女性が怪我をした。今仕事も休んでる。どうしてくれるんだ」と責められました。もともと持ちかけて来たのは女性の方であることから、納得がいかずに反論しようとしましたが怖くてできませんでした。

男性の一人が書類を持って来て「とりあえずこれにサインして。あと免許証もってるやろ。出して」と言われました。書類には念書と書かれてあり、「私は本番行為を強要しました」「罰金として100万円を払います」という内容のことが書かれていました。控えはもらっていないので正確な文言は覚えていません。

さすがにこの書類にサインをするのは怖かったので、「私は本番を強要していません」と男性に訴えましたが「うちのスタッフはあんたに強要されたって言ってる」と全く取り合ってくれません。

「本番強要したら強姦罪になる。警察行くか、金払うかどっちにする?」と詰め寄られ、血の気が引きました。「罰金を払うなら大目に見る。免許証のコピーは今後また同じようなことをされたときに困るから、規約違反した人からは全員もらう決まりになってるから仕方がない。こんなことで人生を棒にふるのは嫌でしょ?さっさと解決した方が楽だよ」と男性から穏やかに言われました。

強姦罪で逮捕されることを考えたら確かにお金で解決できた方がましだと考え、仕方なく書類にサインをして免許証も手渡しました。その場ではお金がなかったため、手持ちの10万円だけ支払って残りの90万円については後日振込すると約束して一旦解放してもらえましたが、正直90万円ものお金を用意することはできません。

それに、本番を強要したという事実も嘘なので、なんとか念書を取り消して今回のことを解決したいです。

解決に至った経緯

今回のケースでは、風俗嬢から本番行為をもちかけているにもかかわらず蓋を開けてみると男性側から強要したことにされており、念書にもサインをさせられてしまっています。実害も、女性に支払った治療費とお店に支払った10万円の被害が出ていますが、男性の希望としてはとにかくこれ以上お金を払いたくないとのことでした。

まずは念書について効力を取り消し、改めて示談交渉を行うことを提案しました。店側は罰金として100万円を要求して来ていますが、罰金については支払い義務はないためこのことも合わせて主張し、すでに罰金として支払った10万円についても不当利得として返還を主張することとしました。

まず相談者が店の男性スタッフから言われた「強姦罪になる」「警察に行くか金を払うか」という発言に恐怖を感じて念書にサインをしているので、これは刑法上の恐喝罪(刑法249条)にあたる可能性が高いことを店側に伝えました。

同様に、自由意志があって念書にサインをしたとは言えないため、民法96条の強迫による意思表示であることを根拠に念書の効力を取り消すことを主張し、罰金についても支払い義務がないので不当利得として10万円の返還請求を行いました(民法703条)。

弁護士が間に入ったことにより相手の態度も軟化し、直接会って示談交渉の機会も取り付けることができました。しかし、すでに支払っている10万円については返還に難色を示されてしまい、「規約に違反されてこちらも迷惑している。女性も実際に怪我を負っていて、損害が出ていることは事実だ」と主張されました。

そのことを相談者に報告したところ「誘われて本番行為をしたとは言えこちらにも落ち度がある。10万円については勉強料と思って諦めます。それよりも早く解決してすっきりしたいです」という返答でした。そのため10万円の不当利得返還請求については取り下げました。

示談書には清算条項や守秘義務の条項など相談者の希望に沿った内容の事項を明記し、示談金は無しということで示談をまとめることに成功しました。今後この件で風俗店から何らかの連絡や要求が来ることはありませんでした。

相談事例②:デリヘルの店長に暴力と恐喝で50万脅し取られました

数ヶ月前、自宅で風俗を利用しました。親しい知人男性と風俗についての話をすることがあるのですが、その時に「風俗を利用する時に盗撮している」という話を聞いていたこともあり、盗撮してみたくなりました。

場所は自宅だったので、うまい具合にカメラを隠しておけばわからないだろうと考え、その知人男性にもいろいろ話を聞いて入念に準備をし、ベッドの近くにある本棚の中にカバンを置き、その中にカメラを設置しました。女性が来てから操作したのでは不審がられてしまうと思ったため、女性がくる前からすでに録画状態にしています。

やがて時間が来て女性が自宅にやってきました。いつも指名している女性ではなく、今回初めて指名した女性だったのですが、新人だったからなのか表情が硬く、部屋についてしばらく部屋の中を見渡していました。

もしかすると盗撮されていないかチェックしていたのかもしれません。しかし設置していたカメラのことは女性にはばれず、サービスを受けることになりました。

行為に入った後、「電気を暗くしてもらってもいいですか?」と尋ねられました。本棚は枕元から見える位置にあるのですが、すでに隠しカメラは回っていて赤い電源ランプが光っている状態だったので、電気を暗くすると女性にランプの光が見えてしまうと思った私は「できれば電気をつけたままにしておきたい」と伝えました。

女性は「どうして?」と食い下がってきましたが、そんな反応がくるとは思っていなかったため狼狽してしまい、その質問にうまく答えることができずにいると、女性が本棚の中にあるカバンに目を留めました。本棚の中にカバンがあるのはとても不自然なので、目についてしまったようです。

そこで女性の様子が急変しました。「あんた、もしかして盗撮してるんじゃない!?あのカバン見せて」と大声で騒ぎ始め、行為も途中で中断して服を着始めました。私は「絶対にばれてはいけない!」と思いましたが、カバンを見せないなら警察を呼ぶと言われ、仕方なくカバンの中のカメラを見せて謝罪しました。

女性は泣き出してしまい、「信じられない!お店に電話して全部喋るから」と険しい表情でお店に電話を始めてしまいました。「データを消すからなんとか許してほしい」と頼みましたが、聞く耳を持ってはもらえず、20分くらいして店の店長が到着したようで、表のドアがドンドンと大きく蹴られる音がしました。

店長は激怒しており、「何やってんだ、貴様」と強い口調で罵られました。「データはこっちで確認する」とカメラも没収され、「何したかわかってんだろうな」「今すぐ土下座しろ」と頭を押さえつけられました。あまりの剣幕に恐怖で固まってしまい、土下座したところを店長に撮影されてしまっています。

その後「免許証を出せ」と言われ、免許証をコピーされました。「お前、もう逃げられんぞ。罰金払え。100万って書いてあっただろう」と恫喝され、このままではどうにもならないと思った私は「とりあえず50万円だけなら払えます」と答えました。

その後コンビニで50万円を急いで降ろして店長に手渡すと、「お前、こんなもんじゃ済まんぞ。わかってるだろうな。残りはいつ払うんだ」と言われたため、「今はお金がありませんが後日必ず払います」と言ってしまいました。店長はまた連絡すると言い残して、風俗嬢を連れて帰って行きました。

その後、50万円はいつ払うんだという連絡が連日かかってきています。「払わないなら会社や家族にこのことをバラすぞ」と脅されていて、途方に暮れています。盗撮行為をしてしまった自分が悪いことはわかっているのですが、残りの50万円も支払わなければならないのでしょうか?

解決に至った経緯

盗撮行為をしたことをきっかけに連日デリヘルの店長から請求の電話がかかってきていますが、カメラを没収されたうえ土下座を強要され、それを写真に撮られています。

今回のケースでは、規約に違反して盗撮行為を行っており、そのことに対して罰金を求められています。また、身分証もコピーされていることから、相手からの連絡を無視しても解決には至らないでしょう。

要求に従わない場合には会社や家族にこのことをバラすとまで言っており、土下座をした写真も少この一つとして押さえています。かなり悪質なケースと言えそうです。

相談者は盗撮行為をした時点で店長に脅されて50万円を支払ってしまっていますが、そのことで返って相手方に「もっとお金を払うはずだ」と思われてしまっている可能性があります。そのため、弁護士が間に入って早急に解決をする必要があると判断しました。

今回相談者の希望としては、残りの50万円を支払わずに解決したい・これ以上脅迫めいた要求が続かないように完全に解決させたいとのことでした。そして、規約違反をしたことはこちらに非があるとのことから、すでに支払ってしまった50万円については諦めるとのことでした。

まずは相談者の希望を取り入れた示談書を弁護士が作成し、デリヘルの店長と接触しました。請求されている50万円の支払い義務はないことを伝えましたが、店長は「規約違反によって女性もダメージを受けている。残りの50万円もきっちり支払ってもらう」と引き下がらなかったため、相談者に対して行った土下座の強要が強要罪(刑法223条)に該当する可能性があること・支払わなければ家族や職場にバラすという言動は恐喝罪(刑法249条)に該当する可能性があることを指摘しました。

弁護士が交渉に入ったことによって、店長からの執拗な電話はなくなりました。その後根本的な解決のため、示談書を交わして解決しました。